「考える技術としての統計学」 飯田泰之 7

経済学における統計

統計で問題発見

経済成長に関する定型化された事実

  • 経済成長率に長期的な低下傾向はない
  • 資本の収益率は長期的に一定である
  • 労働者ひとりあたり資本は増大しつづける
  • 資本と算出の比率はほぼ一定
  • 資本の取り分と労働の取り分の比率はほとんど一定
  • 労働者ひとりあたりの所得の成長率は各国でまちまち

経済学者カルドアはこのように統計的な特徴をまとめ、経済成長に関する理論モデルは、これらの統計的性質を再現するようなものでなければならないと主張した。
つまり、整理ツールとしての統計学を使って帰納法アブダクションによる経済理論の創造が必要だと主張した。

理論が予想する因果関係や時系列の性質が実際と一致しているか検定する

伝統的な経済理論は、統計的に検証されつづけて生き残っているので信頼性が高い。比較優位説が特にそうである。(数々の貿易の新理論が産まれたが、統計の洗礼を浴びて沈んでいった)


統計の両方の性質を上手く使わない理論は一時的な流行にしかならない。

真実の姿を求めて

因果関係を知りたいとき、帰納的にそれを発見するためや、自分の仮説が正しいか検定するために回帰分析は有効だ。

バロー回帰

  • GDPの高い国の経済成長率は低くなる傾向にある。
  • 中等教育の普及は経済成長を高める。
  • インフレ率や政府支出の比率が高い国では経済成長率は低くなる。

70年代以降の合理的期待形成の研究で「人々の将来に関する予測値」が経済成長や政策の効果に関する因果決定の大きなファクターだと分かった。こうした予想に役立つのが時系列モデルであり、政策に関する予想されたショックや予想外のショックが様々な変数に波及していくのをVARモデルによって明かにする手法が多い。

  • 状況を整理するのに統計を使う。
  • 因果関係の特定か仮説の検証に統計を使う。
  • 予想にも統計を使う。