ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 7 公共財

公共財とフリーライダー

消費の排除可能性
経済主体による消費の可能性を排除できるような財の性質
消費の競合性
ある経済主体の消費量の増加が、他の経済主体の消費量を減少させるような財の性質
純粋公共財
排除不可能かつ競合的でない財
私的財
排除可能で競合的な財
(准)公共財
純粋公共財と私的財の中間

一般放送のサービスは、受信させないようには出きないので、排除可能性を満さない。受信しても、他の人が受信できなくなったりしないので競合性もない。

ケーブルテレビは、特定の家に受信させないようにできるので排除可能性を満たす。しかし誰かの受信が他の人の受信を妨げたりはしないので競合性がない

クラブ財
排除可能性は満たすが、競合性は無いような財

一般道は、排除不可能だが、人が増えると混雑するので競合的である。

排除可能 排除不可能
競合性消費可能 私的財 コモンプール財
非競合性 クラブ財 純粋公共財
財の種類 排除可能性 競合性
純粋公共財 × × 一般放送
クラブ財 × ケーブルテレビ
コモンプール財 × 一般道
私的財 食品
公共財という性質は、必ずしもモノに固有の物理的特性ではない。
私的財でありえるものが、政策によって公共財になっているものもある。消防、警察は競合性があり排除も可能である。(実際に民間警備サービスがある)駐車場も、やり方によっては排除可能性を持たせる事はできる。
フリーライダーの問題(free rider problem)
排除不可能な財は、生産されてしまえば便益を誰でも享受できるので、その財の生産費用を負担しない方が得となる。各経済主体がそのような戦略を取ると、誰も費用は負担されないので財は生産されない。


「まちのパン屋」と「ベーカリー」が駐車場をつくる議論をしている。

  • 駐車場を作るには6万かかる。
    • 片方だけが賛成したときには、片方が全額6万払って駐車場を作る
    • 両方とも賛成したときには、それぞれ3万づつ払って駐車場を作る
  • 駐車場が作られれば、双方とも利益が5万増えるとする

このとき、戦略形表現は次のようになる。

フリーライダーの問題
ベーカリー
賛成反対
まちのパン屋賛成2,2-1,5
反対5,-10,0

このときの状況は囚人のジレンマになっている。
両方とも反対するため駐車場は作られず、ともに利得は0になる。

そこで、双方とも賛成したときのみ、駐車場を作ることにする。

フリーライダーの問題と多数決1
ベーカリー
賛成反対
まちのパン屋賛成2,2-0,0
反対0,00,0

このとき、両方とも賛成するのはナッシュ均衡である。(両方とも反対するときもナッシュ均衡であるが、被支配戦略である)

駐車場の建設により増えるベーカリーの利益が5万ではなく2万だったとしたら、利得は2万(増える額)-3万(駐車場建設に支払う額)で-1万になる。

フリーライダーの問題と多数決2
ベーカリー
賛成反対
まちのパン屋賛成2,-10,0
反対0,00,0

このとき、ベーカリーは「反対」が弱支配戦略である。両方とも賛成する戦略の組はナッシュ均衡になっていない。

まちのパン屋が駐車場台を1.5万円肩代りしたとする。


フリーライダーの問題と多数決3
ベーカリー
賛成反対
まちのパン屋賛成0.5,0.50,0
反対0,00,0

この場合は、両方とも賛成するのが均衡である。

しかし、実際は他の店がどれだけ儲けるのかは分からないという情報の問題があり、自己申告に委せると「儲からないから肩代りしてくれ」という嘘をついた方が得になる。