ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 4,交渉ゲーム 3

n段階交渉ゲームの式

数学的機能法を用いる。n=1,n=2のときのゲームは既にとけているので前提とする。

nを奇数(最初にオファーするのはプレイヤA)とする。

n-1段階までのゲームが既に解けており、そのゲームでの結果が

第1段階でBがx_{n-1}をオファーし、それをAが承諾する

というものだったとする(帰納法の仮定)

「n段階交渉ゲームで最初にオファーするのはプレイヤA」なので「n-1段階交渉ゲームで最初にオファーするのはプレイヤB」

n段階交渉ゲームの第1段階でBが拒否したとき、仮定より

Bが\delta x_{n-1}をオファーし、それをAが承諾する

のだから、2段階目にもつれこんだ後どうなるかは分かっている。

第1段階にAがするオファーをx_{n}とおく。
Bは

  • 拒否すれば\delta (1 - x_{n-1})
  • 承諾すれば1-x_{n}

もらえるので

  • 1-x_{n} < \delta (1 - x_{n-1})のとき拒否
  • 1-x_{n} = \delta (1 - x_{n-1})のとき拒否か承諾(承諾するとしておく)
  • 1-x_{n} > \delta (1 - x_{n-1})のとき承諾

プレーヤーAはBが承諾してくれる範囲でもっとも得する値を選ぶ。つまり1-x_{n} \ge \delta (1 - x_{n-1})を満す範囲でできるだけ大きいx_{n]をオファーすればよい。

n段階交渉ゲームでは

第1段階でAがx_{n} = 1- \delta (1 - x_{n-1})をオファーし、それをBが承諾する

n+1段階ゲームでは、最初にオファーするのはBである。

  • x_{n+1} < \delta x_{n}のとき拒否
  • x_{n+1} = \delta x_{n}のとき拒否か承諾
  • x_{n+1} > \delta x_{n}のとき承諾

承諾してくれる範囲でBのシェア1-x_{n+1}が大きくなるような、つまりx_{n+1}が小さくなるようなものを選ぶ。

x_{n+1} = \delta x_{n}

前の式を使ってx_{n}を消去すると


x_{n+1} = \delta ^ 2 x_{n-1}+ \delta - \delta^2

これを変形すると

x_{n+1} - \frac{\delta}{1 + \delta}= \delta^2 [x_{n-1} - \frac{\delta}{1 + \delta}]

よって

x_{n+1} - \frac{\delta}{1 + \delta}= \delta^{n-1} [x_{2} - \frac{\delta}{1 + \delta}]=\frac{\delta^{n+1}}{1+\delta}

なので

x_{n}= \left \{\begin{array}{l} \frac{1+\delta^{n}}{1+\delta} (n (mod) 2 = 1) \\ \frac{\delta+\delta^{n}}{1+\delta} (n (mod) 2 = 0) \end{array} \right.

\lim_{n \rightarrow \infty} x_{n}= \{\begin{array}{l} \frac{1}{1+\delta} (n (mod) 2 = 1) \\ \frac{\delta}{1+\delta} (n (mod) 2 = 0) \end{array}

nが十分に大きいとき、δが0に近いときは最後通帳ゲームになり、δが1に近いときは、取り分の比は1:1に近づく。