ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 5,情報とゲーム

情報の構造
ありえる情報の内容を列挙したもの。

「自然」は戦略を自分の意思で選ばず、確率的に選ぶプレイヤーである。

  • 能力高い人の生産力は6単位
  • 能力高い人の生産力は3単位
  • 給与は能力に関わらず4単位

とする。

情報の構造は{{能力高}、{能力低}}

右側の節では「雇う」、左側の節では「雇わない」が最適な戦略でありナッシュ均衡である。しかしながら、これは被雇用者の能力が分かるときだけである。そのような情報がない状況での判断を考える。

同じ情報集合内では、同じ戦略を選ばなくてはならない。

情報の構造は{{能力高,能力低}}

ベイズ完全均衡

さきほどのゲームには原理的にバックワードインダクションは使えない。そうするとサブゲーム完全均衡はより優れた解概念であるが、情報集合内の点を切り離して独立したゲームとしては分析できないので、サブゲームは元のゲームただ一つとなり、そのナッシュ均衡を求めればよいということになる。

戦略
それぞれの情報集合内でどのような行動を決める

ここで企業の戦略は「雇う」「雇わない」の二つ。雇う時の平均利得は0.5,雇わないときの利得は0なので、雇った方が良いことになる。

信念
見積り確率の事

最初のゲームでは期待利得1、次のゲームでは期待利得0.5だったので、情報構造は最初のゲームの方が利得0.5だけ価値が高い。

ベイズ完全均衡(Perfect Bayesian Nash Equilibrium)
戦略の組とすべての情報集合における信念の組み合わせのうち次の要請を満たすもの
  • 最適反応:各プレーヤーは相手の戦略に対して自分の信念の下で自分の期待利得を最大にしている
  • 信念の合理性:信念は確率法則に反さない


ベイズ完全均衡で用いられる戦略の組はサブゲーム完全均衡になっている。(逆は必ずしも成りたたない)

ナッシュ均衡⊃サブゲーム完全均衡⊃ベイズ完全均衡

プレイヤー2は「プレーヤー1が家事をやる」と仮定しているとき、右側の節に1、左側の節に0を見積る。この信念の元に家事をやれば期待利得は2、家事をやらなければ期待利得は3なので「やらない」が最適な反応。

プレーヤー1は相手が「やらない」とき、自分も「やらない」のは、最悪の結果になるので、「家事をやる」のが最適反応。

{プレイヤー1:やる,プレイヤー2:やらない,信念:プレイヤー1は100%やる}はベイズ均衡

同じよう考えていくと

{プレイヤー1:やらない,プレイヤー2:やる,信念:プレイヤー1は100%やらない}もベイズ均衡