ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 7 公共財 4

修正 Groves-Clarke メカニズム

修正GCカニズム

  • 生産するしないに関わらず、もし相手が費用の均等割りよりも高い申告をしているならば、申告額と均等割額の差額が自分の負担金に追加される。

もしr_2 \ge \frac c 2なら、プレイヤー1の負担金の追加分はr_2- \frac c 2となる。この負担額は公共財が生産されてもされなくてもプレイヤー1に課されてしまう。(もし生産されたとしたら負担金の総額は(c-r_2)+(r_2- \frac c 2)= \frac c 2である。)[tex:r_1+r_2

  • プレイヤー1の利得は

r_1+r_2 \ge c
(生産される)
r_1+r_2 \lt c
(生産されない)
r_2 \lt \frac c 2(追加負担0) v_1+r_2-c0
r_2 \ge \frac c 2(追加負担r_2- \frac c 2) v_1-\frac c 2\frac c 2-r_2

  • プレイヤー2の利得は

r_1+r_2 \ge c
(生産される)
r_1+r_2 \lt c
(生産されない)
r_1 \lt \frac c 2(追加負担0) v_2+r_1-c0
r_1 \ge \frac c 2(追加負担r_1- \frac c 2) v_2-\frac c 2\frac c 2-r_1



この場合、プレイヤ1が正直に申告するr_1=v_1事が弱支配戦略である事を示す。
r_2 \lt \frac c 2の時は、通常のGCカニズムと同じ議論により、r_1=v_1が他の戦略を弱支配することがわかるので、r_2 \ge \frac c 2の場合について考える。


自分の申告額は、公共財が生産されるかされないかを左右することはできるが、最終的な利得の中には現われてこない。

つまり、

  • 公共財が生産された方が得ならば、公共財を生産されるようなr_1を選びさえできれば良い。
  • 公共財が生産された方が損ならば、公共財を生産されないようなr_1を選びさえできれば良い。

(公共財が生産された時の利得v_1-\frac c 2)-(公共財が生産されなかった時の利得\frac c 2-r_2)=v_1+r_2-cなので

  • v_1+r_2-c \ge 0なら生産された方が良い。
  • v_1+r_2-c \lt 0なら生産されない方が良い。

戦略r_1=v_1を取っておけば

  • v_1+r_2-c \ge 0のとき,r_1+r_2 = v_1+r_2 \ge cなので公共財は生産される。
  • v_1+r_2-c \lt 0のとき,r_1+r_2 = v_1+r_2 \lt cなので公共財は生産されない。

以上でr_1=v_1が弱支配戦略だと確認できた。
プレイヤー2についても同じように議論ができ、r_2=v_2が弱支配戦略となっている。


このメカニズムにおいて公共財が生産されるとき、両プレイヤーが負担する総額は、公共財の生産額を越えているだろうか。(つまり公共財の生産を賄えるだろうか。)


まず、少なくとも一方は、生産費用の半額よりも高い額で申告をしているはずである。

生産されることが決まっているのでr_1+r_2 \ge cになっているはずである。

もし、両プレイヤーが半額より低い申告をしていたと仮定すると、r_1 \lt \frac c 2,r_2 \lt \frac c 2となる。このとき,この2式からr_1+r_2 \lt cとなる。これはr_1+r_2 \ge cに矛盾するので、両プレイヤーが半額より低い申告をしているということはない。
少くとも一方は、半額より高い申告をしているはずである。

  • プレイヤー2のみが半額より高い申告をしていると仮定(r_2 \ge \frac c 2かつr_1 \lt \frac c 2)する。(プレイヤー1の通常負担額c-r_2)+(プレイヤー2の通常負担額c-r_1)+(プレイヤー1の追加負担額r_2- \frac c 2)=c+(\frac 1 2 c-r_1)となる。r_1 \lt \frac c 2だったのでc+(\frac 1 2 c-r_1) \gt cとなり、公共財の生産費用は賄われている事がわかる。
  • プレイヤー1が半額より高い申告をする場合は、同じ議論で同じ結論になるので省略する
  • 両者とも高い申告をする場合(r_1 \ge \frac c 2かつr_1 \ge \frac c 2)は、両者とも追加の負担をするので、(プレイヤー1の通常負担額c-r_2)+(プレイヤー2の通常負担額c-r_1)+(プレイヤー1の追加負担額r_2- \frac c 2)+(プレイヤー2の追加負担額r_1- \frac c 2)=cとなり、費用が分担されている。