ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 7 公共財 3
(http://wiredvision.jp/blog/kojima/200710/200710272250.htmlの記事も参考になる。)
Groves-Clarke メカニズム
評価の申告額を変えることによって、自らの負担金を減らすことができた事に問題があった。正しいインセンティブを与えるには、負担金が申告額に依存せずに決まらなくてはならない。
Groves-Clarke メカニズム
- 各プレイヤーはを、自分の評価額として申告する。(真の評価額と等しい必要性はない)
- 申告額の総額が総費用より大きければ()、公共財を生産する
- 生産するときには、第iプレイヤーの負担額は、総費用から相手の申告した額を引いたものとする。第1プレイヤーの支払う額は,第2プレイヤーの支払う額はとなる。
戦略が採られたとき、
- 第1プレイヤーの利得は
- 第2プレイヤーの利得は
各自の最終的な利得に、自身の申告額が含まれていない所が重要。
プレーヤー1にとって、自分の評価を正直に申告する戦略()が、相手のどのような戦略に対しても弱支配することを示す。(つまり、正直こそが弱支配戦略であることを示す。)
まずがとなるを弱支配していることを示す。(つまり、実際の評価額より小さな額を申告しても得が無い事を示す)
3つのケースに分けて考える
- のとき、戦略でも戦略でも公共物は生産され、利得はとなる。
- のとき、戦略なら生産され利得はで、これはこの状況では正であり、戦略のときは生産されず利得は0であるので、はより厳密に望ましい。
- のとき、戦略でも戦略でも公共物は生産されず、利得はとなる。
次にがとなるを弱支配していることを示す。(つまり、実際の評価額より大きな額を申告しても得が無い事を示す)
3つのケースに分けて考える
- のとき、戦略でも戦略でも公共物は生産され、利得はとなる。
- のとき、戦略なら生産され利得はで、これはこの状況では負であり、戦略のときは生産されず利得は0であるので、はより厳密に望ましい。
- のとき、戦略でも戦略でも公共物は生産されず、利得はとなる。
以上からが弱支配戦略になっている事が示される。これはプレイヤー2にとっても同じ事である。
- 公共物が生産されるときはプレイヤーの利得は非負である。
- 各プレイヤーは正直に評価額を申告しのときのみ公共物が生産される。
これで全ての問題は解決しかたのように思えるが、実際は各プレイヤーの負担した額を合計しても、公共物の生産費用に届かない。
それぞれプレイヤーは正直に申告する()ので、プレイヤー1の負担は、プレイヤー2の負担はとなる。このとき負担の総額はとなる。だったのでは負となり、プレイヤーの負担総額は生産費用のcより小さい。
このメカニズムは個人に正しい申告をさせるために余計な費用をかけてしまう。
「人に本音を言わせるのは、ただでは無理で、場合によってはとても高くつく」、ということ。だから、社会においてその構成員に正しいインセンティブを与えるためには、非常に大きいコストを要する可能性が高く、効率的な経済活動というのは口でいうほど簡単ではない、ということなのだ。
http://wiredvision.jp/blog/kojima/200710/200710272250.html
情報の非対称性を解消するために社会的に費用がかかるケースをいままでも見てきた
- 第5章では労働者の能力が解らないがために社会的に無駄が生じる可能性を見た
- 第6章では売り手は書い手の個人情報を知らないために余剰をいくぶん取り損なった。
公共財のケースも同様で、余計な費用を無くす事はできない。