ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志 松井彰彦 6オークション
さまざまなオークション
公開入札方式
公開の場所で行われる競り売りであり、入札者(買い手)は相互に提示価格を知ることができる。
- イングリッシュ・オークション(English auction)
- 通常のオークションである。入札する買い手側が価格を釣り上げながら、最終的に最も高い価格を提示した買い手に販売(落札)される方式である。
- ダッチ・オークション(Dutch auction)
- 通常のオークションとは逆に、価格が順番に下がっていく。売り手が設定する最高価格から順番に価格を下げていき、買い手は適当なところで入札し、その時点の価格で落札が行われる。取引のスピードが高速化できるので、様々な市場で採用されている。また、バナナの叩き売りもこの一種である。
競売 - Wikipedia封印入札方式(sealed bid auction)
入札者(買い手)が相互に提示価格を知ることができない競売である。裁判所の不動産競売は通常この方式で行われる。封印入札方式の代表例として第一価格入札(ファーストプライスオークション)と第二価格入札(セカンドプライスオークション)がある。後者はen:Vickrey auctionのスペシャルケースである。
- ファーストプライス・オークション(First-price auction)
- 最終的に最も高い価格を入札した買い手に販売され、支払額も最も高い価格に設定される。一般的な形態。
- セカンドプライス・オークション(Second-price auction)
- 最終的に最も高い価格を入札した買い手に販売されるが、支払額は2番目に最も高い価格(競合者の最高提示価格。競合者がない場合には売り手側の提示した最低金額)に設定される。ゲーム理論の議論を用いれば、いくつかの仮定のもとでは、均衡において全員が自分の評価額をそのまま入札することが証明できる。
戦略的な関係
買い手はなるべく安く競り落としたいが、そのためには他の買い手がどうふるまうかを知ること が重要になる。
他の買い手の入札額は、買い手の商品への評価に依存する。その情報を持っている事が重要となる。
売り手は儲けを最大にしたいが、これも買い手の商品への評価に依存する。
オークションのゲーム表現
次のような例を考える
- 商品は一つある
- 買い手は二人いる(B1,B2)
- B1,B2の商品への評価額はV1,V2
- 売り手にとって商品はまったく価値が無い
完全情報の場合
売り手が評価額を知っている場合、V1,V2のうち、高い方と直接交渉すればよい。仮にV1>V2だとしたら、B1にたいしV1額をオファーして最後通牒をつきつければ、買い手1はそれを受けいれるのでV1で販売できる。
このとき買い手と売り手の間に生じる余剰はV1円でそれをすべて売り手が取り込む。(これは需要に対する独占価格づけである)
まとめると、売り手が買い手の需要を完全にしっていて自由に価格を決められるとき、商品の取引価格pはmax(V1,V2)となり、余剰はmax(V1,V2)で、それを全て売り手が受け取ることになる。
競売
p≦Vの間に相手が降りてくれれば、自分の利得となるV-pは、自分が降りた場合の利得0より上である。
- B1は「p≦V1の間は競売に残る」が弱支配戦略
- B2は「p≦V2の間は競売に残る」が弱支配戦略
そこでmix(V1,V2)=pになった途端に、評価額の小さい方が降りて競売は終了する。
余剰の総額はmax(V1,V2) (競り落とした人間、つまり評価額の高い方の評価額)
売り手はp=min(v1,v2)を受けとる。買い手はmax(V1,V2)-min(v1,v2)を受け取る。
売り手が需要を知っていれば、余剰を全て手にいれる事ができた。つまり、買い手の需要は、その差額分の価値のある情報だった。
今回の議論はn人に拡張してもなりたつ。競り落とす額は2番目に高い評価額となる。
セカンドプライスオークション
自分の評価額を入札金額にするのが弱支配戦略となる。
入札金額をP1,P2とする。
B1はV1>P2のときのみ、商品を競り落としたい。(競り落とすことができれば支払額はP2なので、V1-P2だけもうかる。V1<P2の時、競り落とすと損をする。)
B1の儲けはP1に直接は依存しない。V1=P1にすれば,V1>P2ならばP1>P2なので入札できるし,V1<P2ならばP1<P2となるので競り落とさずに住む。
余剰の総額はmax(V1,V2) (競り落とした人間、つまり評価額の高い方の評価額)
売り手はp=min(v1,v2)を受けとる。買い手はmax(V1,V2)-min(v1,v2)を受け取る。
競争入札
仮定としてV2は区間[0,1]の一様分布に従うとする。
B2はV2以上の値段を入札したりはしないので、P2は0からV2の間になる。
このときB2がV2にたいして割合k(1>k>0)で入札するとする。(つまりP2=k * V2)
- 例
- V1=0.5,P2=0.4,k=0.8:
このとき,P2=0.8V2なので0.4>0.8V2 つまり0.5>V2のとき、B1は競り落とせる。「V2は区間[0,1]の一様分布」なので、0.5>V2となる確率は1/2
B1の期待利得は0.05()
このようにV1,P1,kが分かれば、買い手にとっての期待利得がわかる。
買い手1にとっての最適反応とは、その期待利得を最大にする入札金額である。kを一定にして一般のケースで考える。
B1が競り落とせるのは、P1>k*V2、つまりP1/k >V2 のときである。
P1/k >V2となる確率は、P1/kである。そこでB1の期待利得は(V1-P1)*P1/kとなる。B1にとってV1は既知なので、この式はkが決っているときにP1を変えたときに期待利得がどうなるかを示している。式変形(平方完成)するととなるのでのとき、期待利得は最大になる。したがって評価額の半分を入札額にするのがよい。
B2の側から見てもそうである。(つまりk=1/2が合理的となる)
売り手からみてみる。
買い手がお互いに相手の評価額は[0,1]の一様分布に従うと想定している事を、売り手が知っているとする。
すると「自然」が評価額V1,V2を決定し、それをB1,B2に内緒に知らせている、という風にみえる。
の戦略は,自分の未知の評価額に入札金額を対応させる関数。
買い手二人の競争入札は
- プレイヤーは2人
- プレイヤーの戦略の集合は、自分の未知の評価額に入札金額を対応させる関数の全体
- プレイヤーの利得は競争入札での期待収益
両方のプレイヤーが自分の評価額がなら,入札金額をにするという状況はナッシュ均衡になっている。